ガラスにまつわる人・もの・コトを紹介。

ふだん何気なく見ていたガラスが、より身近に感じられる

楽しい話題や情報をお届けします。

「天気のように変化のあるお店という想いを、スペシャルソースさんが窓でも表現してくれました。実際に窓からの眺めは晴れ、曇り、雨の日、それぞれに情緒があってどの日も好き」と秋山さん。

お店を訪れると見ることができる窓の数々(左上の写真のみ、お店が入っている東京貴金属会館ビルの壁面の窓。インテリアの参考にしたくなるシーンばかり。

【ガラスのはなし】 #004

服、雑貨、空間 ——。

店主の審美眼で彩られたセレクトショップ

SUNNY CLOUDY RAINY」

 ここ数年、クラフトの街&新しいカルチャーの発信地として注目を集めている東京のイーストサイド、台東区蔵前エリア。この街に2015年の春にオープンした「SUNNY CLOUDY RAINY」(サニー クラウディ レイニー)は、店主の秋山香菜子さんが営む洋服と日用品のセレクトショップ。“毎日変わる天気のように変化のあるお店”というコンセプトのもと、秋山さんが自らのフィルターを通してその都度心に響いた“好きなもの、いいもの”が丁寧に集められています。

 

 お店は、蜂の巣が連なったような小窓がかわいい古いビルの2階。階段を上ると、ガラスがはめこまれた入口の造作ドアが見え、その雰囲気からもセンスのよさが伺えます。お店の中に1歩入ると、ほのかないい香りに包まれると同時に、二面に設けられた大きな窓から気持ちのいい光と風が注ぎこみます。

 元は歯科医院だったというワンフロアをリノベーションした店内は、ギャラリーのような整然とした美しさと、年月を経たかのような味わいを感じさせる独特の空間。この内装を手がけたのは、秋山さんが“いつか自分のお店を持ったらお願いしたい”と長年憧れ続けていた、インテリアデザイン・施工チーム「special source(スペシャルソース)」。

 「スペシャルソースさんは、私が長年大好きな洋服やさんの内装を手がけられた方々。依頼を引き受けてくださったときは本当にうれしくて。お店のコンセプトだけを伝えて、あとはすべておまかせしました。期待通り、いえ、それ以上の素敵な仕上がりで、自慢の空間です」と、オープン当時の感動を思い出しながら話してくれた秋山さん。なかでも注目したいのは、窓。一見すると古いものに見えますが、実は、「スペシャルソース」によってすべて一から新しく造られたもの。よく見ると、店の手前側にある3連の窓は、格子の幅や大きさがそれぞれ違ったり、小さなハンドルをくるくると回すと窓が開く仕掛けになっていたりと、他にはないデザインが随所に見られます。

 

 商品のセレクト、空間、ディスプレイ……。そのすべてを通して秋山さんのセンスのよさを体感できるお店は、ちょっと足を伸ばしてでも訪れたくなる1軒。常設時はもちろん、月ごとにさまざまな作家の展示や企画展も行われているので、そちらもぜひ注目を。

Shop data

SUNNY CLOUDY RAINY

住所:東京都台東区蔵前4-20-8 東京貴金属会館2

TEL:03-6240-9779

http://sunnycloudyrainy.com

店内に飾られた小さなガラス製品やディスプレイにもぜひ注目を。下段右は、店頭で扱っている「Skantiqueスカンティー」の商品で、ヌータヤルヴィ社・ミランダシリーズのガラスの皿。

コーヒー専門店で修行を積んだのち、独立したオーナーの廣田さん。コーヒーは注文を受けてからハンドドリップで丁寧に抽出

上/伝統的な魚子(ななこ)柄のカップでいただいた、すみだブレンド(480円)。左下/ミルク色のレトロなガラスの器に盛られたコーヒーソフトクリーム&ゼリー(570円)。右下/カウンターにずらりと並ぶ、「すみだ珈琲」オリジナルの江戸切子のカップ。

【ガラスのはなし】 #003

江戸切子のカップでいただくとっておきの

コーヒー時間。「すみだ珈琲」

 東京スカイツリーがぐっと間近に見える、東京都墨田区・錦糸町。下町風情と都市の景観が入り混じるこの街に店を構える「すみだ珈琲」は、希少なスペシャルティコーヒー豆のみを使用した自家焙煎コーヒーの専門店。錦糸町駅から徒歩10分ほど離れた蔵前通り沿いに、突如現れる築約50年という古い木造家屋が店の目印。外観から何とも言えない懐かしい風情が漂う店の引き戸をガラリと開けると、たちまちコーヒーの芳醇な香りに包まれます。

「気軽においしいコーヒーが味わえる、心地いい社交場をつくりたい」との想いから、オーナーの廣田英朗さんが2010年にオープン。今年で8年目を迎える同店は、すっかり墨田区の顔として定着し、地元住民の憩いの場としてだけではなく、観光客やコーヒー好きが遠方からわざわざ訪れる人気のお店です。

 

 コーヒーの味はもちろん、同店が注目を集める理由がもう一つ。それは、東京の伝統工芸品、江戸切子のカップでコーヒーを飲めるということ。江戸切子とは、ガラスの表面を切る・削るなどして加工や装飾を施す、江戸時代後期から今も続く伝統的なガラス工芸の一つ。墨田区は昔から江戸切子の職人が多くいたことから、今でも江戸切子を製造、販売する企業や工房が土地に根付いています。ただ、職人の手作業で1つ1つ繊細な細工を施す江戸切子の器は、普段づかいにはなかなかハードルが高い高級品。そこで、廣田さんは墨田区にゆかりのある江戸切子の魅力をもっと多くの人に体感してほしいとの想いから、コーヒーなどのあたたかい飲み物にも使えるオリジナルの江戸切子カップを、地元の「廣田硝子」とともに開発。コーヒー×江戸切子という斬新なスタイルが口コミで広がり、こだわりの味と器を楽しみに幅広い層のお客さんが店を訪れています。「江戸切子はハレの日の器としての印象が強く、特に若い人は実際に使う機会がなかなかないと思うんです。コーヒーを飲むという日常の中で、気負わずに江戸切子の美しさを感じてもらうきっかけになったらいいなと思います」と廣田さん。

 

 同店にはこのほかにも、大正〜昭和のレトロなガラスの照明や器なども使われいて、趣たっぷりの店の雰囲気に彩りを添えています。入り口の引き戸にも、さりげなく切子硝子が。日々の忙しさをひととき忘れ、ちょっと特別な気分でコーヒーを楽しみたい——。そんなとっておきの時間が過ごせる1軒です。

Shop data

すみだ珈琲

住所:東京都墨田区太平4-7-11

TEL:03-5637-7783

部分的に切子模様のガラスを入れた印象的な引き戸。日の光を受けると、店内の床に小さな切子模様の影が生まれます。

https://www.facebook.com/sumidacoffee/

「今村ガラス」の3代目、今村智一さん。

ガラスの細切りは熟練の技ならでは。わずか3ミリほどの薄いガラスを、端と端に目安を付け、ホイールカッターでスーっと刃を入れ、その刃の跡をとんとんと軽く叩き、折るようにすると、きれいな細切りが完成。

ガラスを切るホイールカッター。昔ながらのものは刃がダイヤモンド製なのだとか。

さまざまな板ガラスがストックされた工房内。

【ガラスのはなし】 #002

下町のガラス屋さんを訪ねて。

「今村ガラス」

 「窓ガラスが割れてしまった」「窓を取り替えたい」——。そんな時どこに相談していいのかわからない、という人も少なくないのではないでしょうか。今でこそ数は減ってしまったものの、昔ながらの八百屋さんや酒屋さんのように、町には代々その地域に根ざしたガラス屋さんがあります。

 

 東京・台東区竜泉。古くからある家屋や個人商店が軒を連ね、独特な下町風情を醸すこの町で、70年にわたり店を営む「今村ガラス」。現在は2代目の今村輝男さんと、3代目の今村智一さん、智一さんの兄弟子の丸井さんの3人で切り盛りしています。事務所に併設された工房に入ると、さまざまな種類、サイズ、厚さの板ガラスが壁沿いにずらり! お客さんから窓ガラスの修理依頼が入ると、破損の状況を把握した上で、その家の窓に合う板ガラスを選び、必要なサイズと形に切断、加工。短時間で新しいものへと付け替えます。「長年この町でガラス屋をやっていると、お客さんも地域の顔なじみの人が多い。大体どこの家の窓がどんなものかがわかるから、すぐに対応できるしね」と話すのは、現在主に現場に立って施工を手がける3代目の智一さん。台東区周辺にはお寺や神社も多いため、先代のおじいさんの頃からお付き合いが続くお客さんも多いのだとか。

 

 智一さんは建材会社に勤めた後、20年前に実家に戻り、家業を継ぎました。その数年後には国家資格の一級ガラス施工技能士、二級建築施工管理技士を取得。2015年には全国の熟練技能者が技を競う「第28回技能グランプリ」で優勝するまでに。全国屈指のガラス施工のプロフェッショナルに、実際に板ガラスを切る工程の一部を見せてもらうと、それはミリ単位のごく繊細な作業。見た目と手に触れる感覚、板ガラスに当てるホイールカッターの音を聞きながら、サイズ通りにガラスを切り出していきます。「ガラスは1ミリでも足りなかったら商品にならないので、すごく神経を使います」と智一さん。窓や建具としてのガラスは既成品としてのイメージが強いものの、実は、こうした職人の手仕事によって各家庭に合う窓ガラスが生み出されています。

 

 ちょっとしたことでも、すぐに相談ができる顔の見えるガラス屋さんが町にあるのは、頼もしい限り。「KURASU.GLASS」は、こうした暮らしの中のガラスについて気軽に相談できる窓口になりたいと思っています。

Shop data

今村ガラス

住所:東京都台東区竜泉3-9-7

TEL:03-3873-5927

吹きガラスの吹き竿にガラスの種を巻き取っている様子。溶解炉の温度は1200度前後。炉の前に立つだけでも強烈な熱気! 作業中の工房内は室温40度以上が当たり前なのだそう。

巻き取ったガラス種に息を吹き込み、新聞紙を厚く重ねて水に浸したものや巨大なピンセットのような道具で素早く成形。吹く息と手の動きだけでみるみるうちに形が変わっていく。

【ガラスのはなし】 #001

ガラス作家・岸本耕平さん

 もともと絵描き志望だった岸本さんが、ガラス作家の道を目指したのは美術大学時代。ガラスならではの素材感と、岸本さんにとって創作の芯である“色”の掛け合わせによる豊かな表現に魅せられ、本格的にガラス工芸を追究するため、大学卒業後、「富山ガラス造形研究所」に入学しました。吹きガラスと電気炉での成形を主体に、あらゆる手法と表現を研究。同所を卒業後、生活と創作の拠点としてそのまま富山に根をおろし、独立後の現在も日々創作活動に励んでいます。

 

 手仕事ならではのゆらぎのあるフォルムを際立たせたシンプルなものから、金属の箔やニカワなどを使った個性的な質感のものまで、さまざまな手法を用いてダイナミックなアート作品や建物の装飾などを数多く手がけてきた岸本さん。そんな彼がいま新たな軸として取り組んでいるのが、照明や食器といった日常の暮らしになじむ、ふだんづかいのプロダクトです。

 

 「KURASU.GLASS」では、岸本さんとコラボレーションし、日常に取り入れやすいガラス製品を企画・開発しています。今回、その第1弾として完成したのが、料理研究家の上野万梨子さんがプロデュースしたプレートLilas/リ。料理を軽やかに受けとめてくれる懐の深さと、食卓のさりげないアクセントにもなるデザインが特徴の器は、2018年1月よりこのサイト内のオンラインショップで受注販売をスタートします。気になる方はぜひチェックしてみてください。

製品詳細はこちら

Profile

岸本 耕平

kohei kishimoto

1983年兵庫県出身。2008年、富山ガラス造形研究所研究科を修了。富山ガラス工房スタッフを経て、2011年に独立。

現在は射水市黒河にアトリエ兼ショールーム「KOHEI GLASS STUDIO 凛」を構え、日々制作に励む。

http://www.koheikishimoto.com